2012年年7月3日に岐山高校生物部の皆さんが西郷小学校の4年生を対象に出張授業を行いました。
「豊かな自然を守るために私たちにできること」というテーマで、研究対象としているホタルとカワニナを例に話してくれました。
「これまでホタルが減少するとエサとなる琵琶湖産のカワニナを放流してきましたが、今年から放流をやめてもらいました・・・なぜでしょうか?」という問題提起から始まりました。
まず、カワニナ標本を使って生徒の皆さんに実際に観察してもらいます。この標本は生物部の皆さんが数か月かけて準備したものだそうです。
標本はそれぞれ、
(1)カゴメカワニナ(琵琶湖産)
(2)タテヒダカワニナ(琵琶湖産)
(3)カワニナ(岐阜市産)
(4)チリメンカワニナ(岐阜市産)
(5)タテヒダカワニナ(伊自良川にて採取したもの)
琵琶湖産のカワニナは細長い形をしており、表面の溝が比較的深くなっていますが、岐阜市産のものは丸っぽく表面はつるつるしており、同じカワニナでも産地によって大きく異なります。また、実験の結果、水の流れに対する強さやホタルの幼虫への忌避反応についてそれぞれのカワニナには違いが見られたとのことでした。
このように形態的にも生理的にも大きく違う琵琶湖産のカワニナの放流によって、伊自良川ではそれまでいたカワニナやチリメンカワニナは減っています。
さらに琵琶湖産のカワニナと一緒に寄生虫や細菌、ウイルスが持ち込まれることで、岐阜市固有の生態系に大きな影響を与えると考えられます。
これまでホタルの減少は、エサとなるカワニナの不足が原因と考えられ放流が行われてきました。しかし、護岸工事や草刈などで悪化したホタルの生息環境を改善しなければ、いくらカワニナを放流したところでホタルは増えません。むしろカワニナの放流によって岐阜の自然を破壊することになりかねないのです。
「琵琶湖産カワニナの放流だけでなく、生き物をむやみに動かすと生態系にどのような影響を与えるのか分からない。ペットを飼えなくなったからといって自然に戻すのではなく、最後まで面倒を見ましょう。」というメッセージで今回の授業は締めくくられました。
講義は小学生にも分かりやすい言葉で解説されており、実際に行なっている調査や実験結果に裏打ちされた説得力のあるものでした。生徒の皆さんも興味深く聞いていたようです。
今後は、伊自良川に定着してしまったタテヒダカワニナについてさらに研究をすすめていくとのことで、カワニナの放流が生態系にどのような影響を与えたのか詳細に分かることでしょう。
自然環境課 坂井