自然愛好家には密かに人気の高い大洞の里山。その大洞の里山の実態を探るべく、岐阜大学地域科学部の肥後先生とその研究室の学生さんたちが今年の6月から放棄水田周辺の植物調査に取り組んでいます。
6月には植物相(フロラ)調査を行い、大洞の蓮田周辺に生育する植物をすべてリストアップする作業を行いましたが、今回は蓮田周辺の生態系メカニズムを解明するための“植生調査”を実施しました。
<肥後研究室の精鋭部隊>
<コドラート(方形区)法による植生調査>
植生調査とは、植物群落の様子を植物社会学的に把握するため、一定の枠内に出現する全植物の種名と各種の被度(地表面を覆っている度合い)を記録するものです。今回は50cm四方のコドラートと呼ばれる枠を用いて調査を行いました。
<調査風景>
コドラート内に分布するすべての植物種を判別するのは、知識と経験と根気のいる大変な作業です。現地で種類のわからない植物は標本を採取し、大学で調べます。私にとってはほとんどすべて名も無き草花ですが、肥後先生や学生さんからは次々に種名が挙げられていきます。
<野帳に記録>
先輩たちが次々に挙げる植物の名前や被度などの情報を、横で野帳に記録していきます。これもまた大変な作業ですね。
<アカバナ>
放棄水田のチゴザサの中に1cmくらいの赤いかわいい花をたくさん付けた植物を見つけました。学生さんに名前を聞くと“アカバナ”とのこと。なるほど赤い花だからアカバナか、と思いましたが、ネットで調べてみると秋に葉が赤く色づくことに由来しているそうです。
<コナギ>
蓮田の水溜りにびっしり生えている、姿形がホテイアオイによく似た植物。それもそのはず、ホテイアオイと同じミズアオイ科の水生植物です。ムラサキの花がきれいですが、米づくりには大敵。水中や地中の窒素分を多く摂ってしまうためそれらの栄養分が米に回らなくなり、米の収穫量を落としてしまいます。そういえば、“ホテイアオイは窒素を吸収して水を浄化する”といってあちこちの池にばら撒かれ、外来種の拡大という新たな問題を引き起こしたことを思い出しました。
<キセルアザミ>
8月末に見たときは一株しか咲いていませんでしたが、ぼちぼち咲き始めました。大洞の湿地を代表する種のひとつです。
<色づきはじめたヒメアカネ>
8月1日に紹介したヒメアカネはまっ黄色でしたが、徐々に赤く色づきはじめました。もうしばらくすると成熟して真っ赤なアカトンボになります。
<ヌートリアのフン>
コナギの花の写真を撮ろうと水溜りに入っていくと、長さ4cmくらいの黒っぽいなつめ型の固まりが大量に浮かんでいました。ヌートリアのフンです。人が近づかない放棄水田はヌートリアにとって居心地の良い場所なのでしょう。
自然環境課 吉村