前々回はカスミサンショウウオ保護・保全の概要を
前回はカスミサンショウウオの産卵場所の確保、
卵のうの保護についてお伝えしましたが、
今回は産卵場所で確認された成体と
卵のうのその後についてお伝えしたいと思います。
産卵場所で捕獲された成体と卵のうは
岐阜高校に持ち込まれ、計測・計数を行います。
そして成体には個体識別のため
マイクロチップが埋め込まれ再放流されます。
マイクロチップの大きさは約10mmで、
カスミサンショウウオに麻酔をかけた上で、
注射器を用いて腹部に埋め込まれます。
<マイクロチップと注射針>
<マイクロチップ埋め込みの様子>
毎年、産卵時に捕獲された成体について、
マイクロチップを用いて個体識別することで
生息個体数、生息年数、経年的な行動パターン、
行動範囲などが分かります。
例えば、同じ個体が毎年捕まれば、
生息年数を推定することができます。
また、捕まった時期や場所を調べることで、
経年的な行動パターンや行動範囲を調べることができます。
卵のうは孵化直後まで、岐阜高校で飼育されます。
その後、カスミサンショウウオの幼生の一部が
アクア・トトぎふ、に持ち込まれます。
<アクア・トトぎふでの飼育状況>
ちなみに、昨年孵化した個体は約3500匹で、
その飼育はとても一箇所で行える状況ではありません。
幼生は6月中旬まで飼育され、
陸上生活へと移行する変態直前まで成長したところで、
もともとの生息地に放流されます。
なお、昨年より岐阜大学応用生物科学部の楠田先生の協力を得て、
同大の人工池で半自然状態での飼育を新たに試みています。
<岐阜高校生徒による人工池への放流状況>
もともとの生息地の環境が非常に不安定であるため、
生息地を新たに確保することは、
カスミサンショウウオの保全のために
やむを得ないことと考えております。
また、幼生の一部はそのままアクア・トトぎふで飼育が継続され、
岐阜市産カスミサンショウウオの保存や、
保全のための調査・研究がされています。
これまで、3回に分けてカスミサンショウウオの保護・保全の現場
についてお伝えしてまいりましたが、
今後も現場の状況や調査・研究の結果をもとに
最適な保護・保全方針について検討を繰り返しながら、
カスミサンショウウオの保護・保全は継続されていきます。
自然環境課 井戸