【ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草】
マンジュシャゲ(曼珠沙華)とも呼ばれる全草有毒な球根性植物。散系花序で6枚の花弁が放射状につく。日本には、中国か朝鮮半島からの稲作の伝来時に土と共に鱗茎が混入してきて広まった帰化植物といわれているが、土に穴を掘る小動物を避けるために有毒な鱗茎をあえて持ち込み、あぜや土手に植えたとも考えられる。
道端などに群生し、9月中旬に赤い花をつけるが、稀に白いものもある。生活型は独特で、夏の終わりから秋の初めにかけて、高さ30〜50cmの花茎が葉のない状態で地上に突出し、その先端に5〜7個前後の花がつく。開花後、長さ30〜50cmの線形の細い葉をロゼット状に出すが、翌春になると葉は枯れてしまい、秋が近づくまで地表には何も生えてこない。したがって、開花期には葉がなく、葉があるときは花がない。また、日本に存在するヒガンバナは全て遺伝的に同一であり、三倍体である。故に、雄株、雌株の区別が無く種子で増えることができない。(遺伝子的には雌株である)中国から伝わった1株の球根から日本各地に株分けの形で広まったと考えられる。
鱗茎にアルカロイド(リコリン)を多く含む有毒植物。誤食した場合は吐き気や下痢、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたる。水田の畦(あぜ)や墓地に多く見られるが、これは前者の場合ネズミ、モグラ、虫など田を荒らす動物がその鱗茎の毒を嫌って避ける(忌避)ように、後者の場合は虫除け及び土葬後、死体が動物によって掘り荒されるのを防ぐため、人手によって植えられたためと考えられる。ただしモグラは肉食のため、ヒガンバナに無縁という見解もあるが、エサのミミズがヒガンバナを嫌って土中に住まないためにこの草の近くにはモグラが来ないという見解もある。
彼岸花(ひがんばな)の名は秋の彼岸ごろから開花することに由来する。別名の曼珠沙華は、法華経中の梵語に由来する。
日本での別名・方言は千以上が知られており、おそらく国内で、もっともたくさんの名を持つ植物であろう。 |