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写 真

種 名

種の解説

テイカカズラ

(つた・石網)

【キョウチクトウ科のつる性常緑低木

 葉は長さ1cm(幼木)から数cm(成木)あり、質感は様々で、一般に幼木の方が革状で光沢がある。特に幼木の間は地上をはいまわり、地面に葉を並べる。このときの葉は、深緑色で葉脈に沿って白い斑紋が入ることが多い。

 茎からは気根を出して他のものに固着する。茎の表面には多数の気根が出た跡が残るので、樹皮には多数の突起がある。大きくなると、枝先は高木層の樹冠に達し、幹は直径数cmに達する。葉や茎を切ると白い乳液が出る(有毒)。6月頃に花を咲かせ、房状の花序は垂れ下がる。それぞれの花弁は先端が断ち切られて丸まったような三角形で、それぞれにわずかにねじれ、全体としてちょっとプロペラに似たような形になる。5弁の花ははじめ白く次第に淡黄色になり、ジャスミンに似た芳香がある。果実は細長い袋果で二個が対になってぶら下がり、熟すると縦に裂け目を生じて種子を散布する。種子にはとても長く白い綿毛があり風で飛ぶ。

 和名は、式子内親王を愛した藤原定家が、死後も彼女を忘れられず、ついに定家葛に生まれ変わって彼女の墓にからみついたという伝説(能『定家』)に基づく。また古典に「まさきのかづら」とあるのも本種のことといわれる。

ヌルデ

かづのき・可頭乃木

ウルシ科の落葉高木】 

 ヌルデの名は、かつて幹を傷つけて白い汁を採り塗料として使ったことに由来するとされる。ウルシほどではないが、まれにかぶれる人もいるので注意が必要である。

 雌雄異株。樹高は5-6mほどの小高木であるが10m以上の大木になる事もある。葉は9-13枚の小葉からなる奇数羽状複葉で葉軸には翼がある。小葉は5-12cmの長楕円形で周囲は鋸歯がある。小葉の裏面全体に毛が密生している。葉は秋に紅葉し野山を彩る。

 花は円錐花序で7−8月に開花する。雌花には3つに枝分かれした雌しべがある。雄花には5本の雄しべがあり、花弁は反り返っている。秋には直径5-8mmほどの扁平な球形をした果実をつける。果実の表面にあらわれる白い粉のようなものはリンゴ酸カルシウムの結晶であり、熟した果実を口に含むと塩味が感じられる。種子は土中で長期間休眠する事が知られている。伐採などにより自身の成育に適した環境になると芽を出す。

 木材は色が白く材質が柔らかいことから木彫の材料、木札、木箱などに利用される。

ネムノキ

(ねぶ・合歓木)

ネムノキ科の落葉高木】 

 葉は2回偶数羽状複葉。花は頭状花序になり夏に咲く。淡紅色のおしべが長く美しい。果実は細長く扁平な豆果。イラン・インドから東南アジアを経て日本の東北地方北部まで自生する。陽樹であり、荒れ地に最初に侵入するパイオニア的樹木である。河原などで見ることも多い。また、観賞用に栽培もされることもある。ネムノキ属は主として熱帯に150種ほどが分布するが、その中でネムノキは飛び抜けて耐寒性が強く高緯度まで分布する。温帯で広く栽培され、一部で野生化している。和名のネム、ネブは、夜になると葉が閉じること(就眠運動)に由来する。夏の季語。

ノキシノブ

(しだ草・子太草)

【シダ植物門ウラボシ科ノキシノブ属に属するシダ

 茎は短くて横に這い、表面には一面に鱗片があり、多数の細かい根を出して樹皮などに着生する。葉は茎から出て、全体に細長い単葉で、一般にイメージされるシダの葉とは大きく異なる。形は柳の葉のような線形に近い楕円形、先端は細まり少しとがる。葉質はやや肉厚で、黄緑色、表面につやがない。乾燥した時には、葉は左右から裏側に向けて丸まる。

 低山帯の山林から人里までの樹木や岩の上などに着生する。名前は軒シノブで、軒下などにも生え、シノブのように着生することに由来する。都市部でも庭木やお寺の石灯籠などにも見られる。

 庭木の枝に着いたものや石垣に生えたものなどは風流がられて駆除されることは少ないが、たいていは勝手に生えてくるから、あえて栽培されることもない。

ヒガンバナ

(いちし・壱師) 

ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草

 マンジュシャゲ(曼珠沙華)とも呼ばれる全草有毒な球根性植物。散系花序で6枚の花弁が放射状につく。日本には、中国か朝鮮半島からの稲作の伝来時に土と共に鱗茎が混入してきて広まった帰化植物といわれているが、土に穴を掘る小動物を避けるために有毒な鱗茎をあえて持ち込み、あぜや土手に植えたとも考えられる。

 道端などに群生し、9月中旬に赤い花をつけるが、稀に白いものもある。生活型は独特で、夏の終わりから秋の初めにかけて、高さ3050cmの花茎が葉のない状態で地上に突出し、その先端に57個前後の花がつく。開花後、長さ3050cmの線形の細い葉をロゼット状に出すが、翌春になると葉は枯れてしまい、秋が近づくまで地表には何も生えてこない。したがって、開花期には葉がなく、葉があるときは花がない。また、日本に存在するヒガンバナは全て遺伝的に同一であり、三倍体である。故に、雄株、雌株の区別が無く種子で増えることができない。(遺伝子的には雌株である)中国から伝わった1株の球根から日本各地に株分けの形で広まったと考えられる。

 鱗茎にアルカロイド(リコリン)を多く含む有毒植物。誤食した場合は吐き気や下痢、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたる。水田の畦(あぜ)や墓地に多く見られるが、これは前者の場合ネズミ、モグラ、虫など田を荒らす動物がその鱗茎の毒を嫌って避ける(忌避)ように、後者の場合は虫除け及び土葬後、死体が動物によって掘り荒されるのを防ぐため、人手によって植えられたためと考えられる。ただしモグラは肉食のため、ヒガンバナに無縁という見解もあるが、エサのミミズがヒガンバナを嫌って土中に住まないためにこの草の近くにはモグラが来ないという見解もある。

 彼岸花(ひがんばな)の名は秋の彼岸ごろから開花することに由来する。別名の曼珠沙華は、法華経中の梵語に由来する。

 日本での別名・方言は千以上が知られており、おそらく国内で、もっともたくさんの名を持つ植物であろう。

ヒサカキ

(さかき・賢木)

ツバキ科ヒサカキ属の常緑小高木

 普通は樹高が47m程度になる。葉はやや倒卵状楕円形で、丸い鋸歯がある。葉は厚みがある革質で、表面はつやが強い。葉の先端は、ほんの少しくぼみがあることが多い。枝は横向きに出て、葉が左右交互にでる。

 花期は34月、枝の下側に短くぶら下がるように多数咲く。花は白っぽいクリーム色で壺状で、強い芳香を放つ。この芳香は一般的な花の匂いとは大きく異なり、都市ガスやタクワンに似た独特のものである。果期は1012月。

 本州、四国、九州、沖縄に分布する。目立たないが非常に数が多く照葉樹林帯ではどこの森にも生えている。低木層にでるが、直射光にも強く、伐採時などにもよく残る。また、栽培されていることも多く、墓・仏壇へのお供え(仏さん柴)や玉串(「榊」が手に入らない関東地方以北)などとして、宗教的な利用が多い。これは、一説には本来はサカキを使っていたものの代替であるといわれる。名前も榊でないから非榊であるとか、一回り小さいので姫榊がなまったとかの説がある。

ヒノキ

(ひ・檜)

ヒノキ科ヒノキ属の針葉樹

 ヒノキは日本と台湾にのみ分布する。

 葉は鱗片状で枝に密着し、枝全体としては扁平で、細かい枝も平面上に出る。同科のサワラ・ヒバ(アスナロ)・クロベ(ネズコ)等の葉と似るが、葉裏の気孔帯がY字状になっているのがヒノキである。雄花は枝先に1つずつつくが、小さくて目立たない。雌花は球形で枝先につき、熟すると鱗片にすき間ができる。その形はサッカーボールを思わせる形状である。乾燥した場所を好み、天然のものは尾根すじの岩場などに見られる。植林する場合にはスギを谷側に、ヒノキを尾根側に植える。典型的な陰樹の特性を持ち、幼樹は日当たりを嫌う。建材を目的として植林されるが、樹皮も檜皮葺の材料に使われる。

 日本では古くから建築用材として用いられ、建材として最高品質のものとされる。 正しく使われたヒノキの建築では1000年を超える寿命を保つものがある。既に古事記のスサノオ神話の中で、ヒノキを建材として使うことが示唆されている。 特に寺院、神社の建築には必須で古くから利用された。 飛鳥時代のヒノキ造りの建築はすぐれたものが多く、法隆寺は世界最古の木造建築物として今日までその姿をたもっているほか、主として奈良県内に存在する歴史的建築物はいずれもヒノキを建材としたことによって現存するといって過言でない。もっとも、大径材は奈良時代にすでに不足をきたしていた。伊勢神宮では20年に1度、社を新しく建て替える式年遷宮と呼ばれる行事が行われ、大量のヒノキ材が必要となる。古くは伊勢国のヒノキを使用していたが、次第に不足し三河国や美濃国からも調達するようになった。18世紀には木曽山を御杣山と正式に定め、ここから本格的にヒノキを調達するようになった。

 明治時代になって、調達の困難さが明治天皇にまで伝わるところとなり、恒久的な調達を可能にするため神宮備林においてヒノキを育成することになった。さらに大正時代に入り伊勢神宮周辺に広がる宮域林においてヒノキを育成することになり植林を行った。これらの植林計画は、樹齢200年以上のヒノキを育成することを目標としており、長期的展望に立った計画である。

木曽山の神宮備林は1947年に廃止され国有林に編入されてしまったため、その後はこの国有林からヒノキを購入して式年遷宮を行っている。伊勢神宮の式年遷宮後、前回の式年遷宮で使用されたヒノキ材は日本全国の神社に配布され、新たな神社の社殿となる。

ヒルガオ

(かほぼな・容花)

ヒルガオ科の蔓性の多年草

 アサガオ同様朝開花するが昼になっても花がしぼまないことからこの名がある。地上部は毎年枯れるが、春から蔓が伸び始め、夏にかけて道ばたなどに繁茂する。夏に薄いピンク色で直径56cmの花を咲かせる。花の形は漏斗形。

 アサガオと違って鑑賞用に栽培されることは、殆ど無い。また、結実することはまれであるが、地下茎で増え、一度増えると駆除が難しいため、大半は雑草として扱われる。 ヒルガオの花言葉は「絆」。 根が絡み合っているので,「絆」という花言葉になったと思われる。

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