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写 真

種 名

種の解説

スギ

(松)

【スギ科スギ属の常緑針葉樹

 自然分布としては、本州・四国・九州の冷温帯下部から暖温帯上部に分布していたものと思われるが、植林などによる人為によって分布は暖温帯全体にまで広がっている。樹高は40m、直径2mにも生長し、優良材である。屋久島に生育する縄文スギは推定樹齢7200年とされ、これが事実であれば世界一長寿の樹木である。

 スギはヒノキとともに植林の主要樹種である。ヒノキにくらべて水分を好むので、谷沿いなどの適潤地からやや過湿な立地に植栽されることが多い。自然状態では、湿原の周辺にも生育しており、水湿に強い抵抗性を持っていることが判る。

 スギは古いタイプの植物であり、裸子植物の針葉樹である。昆虫が未進化であるか、まだ活発に活動しなかった時代に進化した植物であり、花粉の媒介は風に乗せて花粉を媒介する風媒花である。雄花は枝の先につき、冬の終わり頃に一斉に開花して大量の花粉を飛散させる。アカマツを除く針葉樹の多くは直根を持たず、根の発達深度は浅い。したがって根が発達している地表から数十cmよりも深い位置での土砂崩壊には抵抗性が低い。

ススキ

おばな・雄花)

イネ科ススキ属の多年生草本

 萱(かや)、尾花ともいう。高さは12m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。夏から秋にかけて茎の先端に長さ2030cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。全国に分布し、日当たりの良い山野に生育している。遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。これを放置すれば、アカマツなどの先駆者的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。

 かつては農家で茅葺(かやぶき)屋根の材料に用いたり、家畜の餌として利用することが多かった。そのため集落の近くに定期的に刈り入れをするススキ草原があり、これを茅場(かやば)と呼んでいた。現在では、そのような利用がされないので、その多くは遷移が進んで、雑木林となっている。そのため、ススキ草原に生育していた植物には、かつて普通種であったが、現在は稀少になっているものがある。

 穂を動物の尾に見立てて、尾花とも呼ばれることもある。山上憶良が万葉集にて、『萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝顔の花』(巻八 1538)と詠んだように秋の七草の一つに数えられる。

スベリヒユ

いはゐづら

スベリヒユ科の多年草】 

 「ひゆ」とは、元来「小さく可愛らしい」ことを意味し、植物では「莧」の字を当てる。 粘液物質を含んでおり、「すべりひゆ」の名は茹でた際にぬめりが出る事に由来するとされる。 若苗は食用にされ、茎や葉は利尿薬や解毒薬として使われた。

 畑や路傍など日当たりの良い所に自然に生えるが、農業においては畑作の害草として知られる。 乾燥耐性があり、全般的に執拗な雑草として嫌われる傾向にあるが、地域によっては食料として畑作もされる。 山形県では「ひょう」と呼び、茹でて芥子醤油で食べる一種の山菜として扱われており、干して保存食にもされた。スベリヒユには利尿作用があり、生薬では全草を乾燥させ「馬歯見」として使う。また、葉の汁は虫刺されに効くとされる。

スミレ

(すみれ)

スミレ科スミレ属の多年草】 

 スミレは、道ばたで春に花を咲かせる野草である。深い紫色の花を咲かせる。平地に普通だが、山間部の道ばたから都会まで見られ、都会ではコンクリートのひび割れ等からも顔を出す。山菜としても利用されている。葉は天ぷらにしたり、茹でておひたしや和え物になり、花の部分は酢の物や椀ダネにする。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーやニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。

 「スミレ」の名はその花の形状が墨入れ(墨壺)を思わせることによる、という説を牧野富太郎が唱え、牧野の著名さもあって広く一般に流布しているが、定説とは言えない。

セリ

(せり・芹)

セリ科の多年草

 独特の香りを持ち、春先の若い茎を食用とする。北半球一帯とオーストラリアに広く分布している。湿地やあぜ道、休耕田など土壌水分の多い場所に自生し、半ば水につかっていることもある湿地性植物である。高さは30cmほど。茎は泥の中や表面を横に這い、あちこちから葉を伸ばす。花期は78月。やや高く茎を伸ばし、その先端に傘状花序をつける。個々の花は小さく、花弁も見えないほどであるがまとまった姿は白く、楚々として美しい。

 春の七草の一つであるため、1月頃であればスーパーマーケット等で束にして売られているのを見ることができる。自生品が出回ることもあるが、最近では養液栽培も盛んである。しかしながら、野草としての性質が強く種子の発芽率が低いため、計画的な生産には発芽率の改善が不可欠である。 栽培ものと野生のものに、比較的差が少ない品種である。

 小川のそばや水田周辺の水路沿いなどで採取できるが、よく似ていて有毒なドクゼリとの区別に配慮が必要である。ドクゼリは匍匐しない点などで区別できる。また、キツネノボタンも一緒に生える毒草である。葉が細かく裂けないので区別できるが、個々の小葉だけを取ると似ているので間違えるおそれがある。

タチツボスミレ

(つほすみれ)

【スミレ科スミレ属の多年草】

 北海道〜琉球列島、国外では朝鮮南部、中国南部まで広く分布する。野原から山林内までさまざまな環境で見られる。日本のスミレ属は種類が多く、さまざまなものが各地に見られるが、花がほぼ同じ時期に見られるため、混同して扱われている場合が多い。スミレも普通種であるが、それ以上に普通種であり、日本を代表するスミレがタチツボスミレとも言える。

 地下茎はやや短く、わずかに横に這い、古くなると木質化する。根出葉は細い葉柄があって、葉身はハート形(心形)。葉にはあまり艶がない。花期は35月。花茎は葉の間から出て立ち上がり、先端がうつむいて花を付ける。花は典型的なスミレの花の形だが、花色は薄いのが普通。花期が終わると、葉の間から茎が伸び始める。茎は始め斜めに出て、それから立ち上がり、その茎の節々から葉や花が出る。茎は高さ20cm程にまでなるが、年は越さず、次の春には、また地下茎から出発する。

チガヤ

(つばな) 

単子葉植物イネ科チガヤ属の多年草

 日向の草地にごく普通に見られ、道端や畑にも出現する。河原の土手などでは、一面に繁茂することがある。なお、チガヤ属には世界の熱帯から暖帯に約10種があるが、日本では1種だけである。

 地下茎は横に這い、所々から少数の葉をまとめて出す。地上には花茎以外にはほとんど葉だけが出ている状態である。葉は冬に枯れるが、温暖地では残ることもある。この時期、葉は先端から赤く染まるのが見られる。初夏に穂を出す。穂は細長い円柱形で、真っ白の綿毛に包まれていて、よく目立つ。種子はこの綿毛に風を受けて遠くまで運ばれる。

 遷移の上では、多年生草本であるので、1年生草本の群落に侵入すると、次第に置き換わってやや安定した草原を形成する。河川の土手などでは、定期的な草刈りや土手焼きなどによって、チガヤ草原が維持されている。

チカラシバ

(しば・芝)

単子葉植物イネ科の多年草

 道端によく見かける雑草のひとつで、ブラシのような穂が特徴的である。非常にしっかりした草で、引き抜くにも刈り取るにもやっかいである。名前の力芝もひきちぎるのに力がいるとの名前である。大きな株を作り、根元から多数の葉を出す。葉は細長く、根元から立ち上がる。花茎は夏以降に出て、真っすぐに立つ。花軸は枝分かれせず、先端近くの軸に多数の針状の毛に包まれた小穂がつく。小穂はビン洗いのブラシや、試験管洗いのような姿になる。穂から多数の毛が伸びてブラシ状になるものとしては、他にエノコログサ類があるが、たいていは穂の先がたれる。また、他にも穂に多数の毛や芒を出すものはあるが、このようにブラシ状のものは少ない。果実が熟してしまうと、果実は小穂の柄の部分から外れるので、あとには軸だけが残る。

 果実は先端の毛と共に外れ、これが引っ掛かりとなって大型動物の毛皮に引っ掛かるようになっている。いわゆるひっつき虫で、毛糸などの目の粗い衣服によく引っ掛かる。

ツブラジイ

(しひ・椎)

ブナ科シイ属の常緑高木

 関東地方南部以西から四国、九州及び朝鮮半島南部に自生している。開花期の5月には、森を黄金に彩り、クリの花に似た匂いを放つ。葉の裏が銀褐色である点が特徴の1つである。

 シイノキの仲間にはツブラジイ(コジイ)とスダジイ(イタジイ)がある。スダジイに比べて種子が丸いことからツブラジイという。別名コジイは、実が小ぶりであるため。ツブラジイは寿命が短く、100年を超えることは少ないという。

岐阜市の市の木となっている。

ツユクサ

(つゆくさ・鴨頭草)

ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物

 畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。高さは1550cmで直立することはなく、茎は地面を這う。69月にかけて1.52cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。

 朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。

 また、ツユクサは古くはつきくさと呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、万葉集などの和歌集では「月草」の表記が多い。

 花の青い色素はアントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。

 万葉集には月草(ツユクサの別名)を詠ったものが9首存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。また俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。

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