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写 真

種 名

種の解説

イロハモミジ

(かへるで)

【カエデ科カエデ属の落葉高木】

 日本では、本州以南の平地から標高 1,000m程度にかけての低山で多く見られる。樹高 15m、幹の直径は 80cm 以上に達する。葉は掌状に深く 59裂する。和名は、この裂片を「いろはにほへと……」と数えたことに由来する。秋(1012月)には黄褐色から紅色に紅葉して散る。 葉はオオモミジやヤマモミジなどに似るが、本種の葉は一回り小さく、鋸葉が粗く不揃いなところで区別される。花期は春(45月)。花は直径 56mm。暗紫色で 5個の萼片と、黄緑色もしくは紫色を帯びる萼片より小さい 5個の花弁をもつ。風媒花。果実は翼果、長さ 1.5cm 程度の翼があり、夏から初秋にかけて熟すと風で飛ばされる。

 

ウメ

(うめ)

バラ科サクラ属の落葉高木】 

 中国の長江流域が原産で、日本には8世紀半ばに渡来した。日本の気候に馴染んでいないため、冬の終わりから春先にあたる2月中旬から3月初頭くらいという、花粉を媒介する虫の少ない時期に花をつける。花の色は白、またはピンク〜赤。梅には300種以上の品種があり、野梅系、紅梅系、豊後系の3系統に分類される。梅の実を採るのは主に豊後系である。

ウワミズザクラ

(かには・櫻皮)

バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木】 

 高さは10mほどになる。6月上〜中旬にかけて咲く花は、いわゆる「さくらの花」というイメージではなく、小さな花びらが集まり、稲穂のように咲く。また秋になり、赤から黒色に熟していく果実は、野鳥が好んで食べるので、この木の周りにはたくさんの幼苗が生えていることが多い。

 ウワミズザクラは昔から人々の生活と関わりの強い樹木で、古来この材のことを波波迦(ははか)と呼び、材の上面に溝を彫り(和名ウワミズザクラの由来)その材を火の中に入れ、亀の甲羅を焼いて、甲羅のヒビの割れ方により吉凶を占った。ウワミズザクラの材はとても堅く、地方により金剛桜、鉈柄(なたづか)とか呼ばれ、版木、彫刻材に使われた。

エゴノキ

(ちさ・山ぢさ)

エゴノキ科の落葉小高木

 高さは10mほどになる。樹皮は赤褐色できめが細かい。葉は両端のとがった楕円形で互生。花期は5月頃、横枝から出た小枝の先端に房状に白い花を下向きに多数つけ、芳香がある。品種により淡紅色の花をつける。果実は長さ2cmほどの楕円形で、大きい種子を1個含む。熟すと果皮は不規則に破れて種子が露出する。

 庭木などとして栽培もするほか、緻密で粘り気のある材を将棋のこまなどの素材とする。果皮に有毒なサポニンを多く含んでいるので、昔は若い果実を石鹸と同じように洗浄剤として洗濯などに用いた。新梢にはしばしば菊花状の構造が認められるが、これはエゴノネコアシと呼ばれる虫こぶである。

オギ

(おぎ・荻)

イネ科ススキ属の多年草】 

 ススキによく似ているが、草丈は2mを越える。洪水などの増水には耐えることができるが、地下部が長期にわたって水没するような場所には生育できないため、ヨシ群落よりも地下水位の高い場所に生育する。オギは地中に横走する地下茎から地上茎を立ち上げるので、群落を形成していても株立ちすることはない。オギは刈り取りには弱く、地上部を年1回刈り取られると、数年で急激に勢力が弱くなってしまう。したがって、刈り取りが行われるとススキが優勢となり、放置されるとオギが優勢となる。オギは漢字で書くと「荻」であり、荻野・荻原などの地名や名字でお馴染みである。昔は洪積平野などに広く生育していたのであろうが、水田や畑地として開墾されてしまったものと思われる。しかし、最近は放棄水田などに群生しているのを見かけることも多くなった。

カナムグラ

(むぐら・葎) 

クワ科の一年草

 雌雄異株のつる植物。茎から葉柄にかけて鋭いとげがあり、木や電柱、ガードレール等に絡みつく。花期は8月〜10月で、雄株は分枝した花茎を伸ばし、多数の淡緑色の花をつける。また雌花は、株の葉腋から花茎を伸ばし、先端に苞に包まれた穂状の花をつける。雌花は受粉後に成熟して果実となると赤紫色を帯びる。

 中国大陸、台湾および日本全国の道端や荒地等の日当たりの良い場所に生育する。また好窒素的な傾向が強く、畜産や農業、家庭排水などの影響により富栄養化した土壌などでより繁殖し、優先種となる傾向が強い。万葉集における「やえむぐら(八重葎)」は、アカネ科のヤエムグラではなく本種を指していると思われる。

クズ

(くず)

マメ科のつる性の多年草】

 秋の七草の一つで、根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。葉は3出複葉、小葉は草質で幅広く、とても大きい。つるは年がたつと太くなり、やや木質化する。地面を這うつるは、節から根を出し、あちこちに根付く。花は89月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、赤紫の豆の花を咲かせる。花は甘い芳香を発する。

 和名は、かつて大和国(現:奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地であったことに由来する。荒れ地に多く、人手の入った薮によく繁茂する。刈り取りを行わない場合、クズの生長はすさまじいものがあり、ちょっとした低木林ならば、その上を覆い尽くす。駆除は、根茎により増殖するため根絶やしにすることが困難である。食品の葛粉(くずこ)はクズの根を晒して作る。葛切りや葛餅などの原料となる。室町時代、とある山中で、猪が葛根をしきりに掘り出そうとしているのを見た人が「食べ物ではないか」と思いついたのが、食糧として認知された始まりであるという伝説がある。

クリ

(栗)

ブナ科クリ属の落葉性高木

 落葉性高木で、高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。葉は長楕円形か長楕円状被針形、やや薄くてぱりぱりしている。表はつやがあり、裏はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。

 雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。また、香りが強い。非常によく昆虫が集まる。ブナ科植物は風媒花で花が地味のものが多いが、クリやシイは虫媒花となっている。 9月から10月頃に実が成熟すると自然に「いが」が裂開して中から堅い果実が13個ずつ現れる。北海道西南部から本州、四国、九州に分布。国外では朝鮮中南部に産する。暖帯から温帯域に分布し、特に暖帯上部に多産する場合があり、これをクリ帯という。

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