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写 真

種 名

種の解説

アカマツ

【マツ科マツ属の常緑針葉樹】

 日本産の松の中でもっとも広い範囲に分布し、目に触れる機会の多い松である。文字通り樹皮が赤いのでこの名が付いている。明るい場所を好む陽樹であり、また乾燥地や、土壌の乏しい溶岩上などに耐えることができる一方、安定した極相林の中では他の樹木に伍して子孫を残すことができない、典型的な先駆植物である。いわゆる里山に於いては、尾根筋に植えられることが多かった。現在の荒廃した里山ではその数を大幅に減らしている。またアカマツ林は、マツタケの生産林でもある。第二次世界大戦前後までは、日本では家庭における燃料を山林に頼っていたので、アカマツ林の落葉や落枝は重要な燃料となっていた。このことがマツタケの生育環境維持に貢献していたと考えられる。

アカメガシワ

(久木) 

トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木

 新芽が鮮紅色であること、そして葉が柏のように大きくなることから命名された。本州・四国・九州・東南アジアの山野に自生し、日本では二次林に多く、空き地などによく生えてくる、典型的な先駆植物である。雌雄異株で、樹高は510mに達する。初夏、白色の花を穂状につける。種子は高温にさらされると発芽しやすくなり、伐採や森林火災により森林が破壊されると一気に繁殖する。樹皮は日本薬局方に記載の生薬で、これを煎じたものは胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃酸過多症に効果があるとされる。

 

アカメガシワ雄株

(久木) 

アケビ

アケビ科の蔓性落葉低木】 

 茎はつるになって他物に巻き付き、古くなると木質化する。花は45月に咲き、木は雌雄同株であるが雌雄異花で淡紫色。成熟した果実の果皮は心皮の合着線で裂開し、甘い胎座とそこに埋もれた多数の黒い種子を裸出する。この胎座の部分は様々な鳥類や哺乳類に食べられて種子散布に寄与する。種子を包む胎座が甘みを持つので、昔から山遊びする子供の絶好のおやつとして親しまれてきた。その他、成熟した蔓はかごを編むなどして工芸品の素材として利用される。江戸時代から明治時代にかけては高級品として珍重された。

アシ

(あし・葦)

湿地性のイネ科の植物】 

 「ヨシ」という名は「アシ」が「悪し」に通じるのを忌んで、逆の意味の「良し」と言い替えたのが定着したものであるが、関東では「アシ」、関西では「ヨシ」が一般的である。条件さえよければ地下茎は一年に5m伸び、適当な間隔で根を下ろす。垂直になった茎は26mの高さになり、暑い夏ほどよく生長する。花は暗紫の長さ2050cmの円錐花序に密集している。主として河川の下流域から汽水域上部などの湿地に広大な茂み(ヨシ原)を作る。根本は水につかるが、水から出ることもある。水流の少ないところに育ち、多数の茎が水中に並び立つことから、その根本には泥が溜まりやすい。このように多くの泥が集まり、蓄積する区域は、有機物の分解が多く行われる場所でもある。他方で、その茎は多くの動物の住みかや隠れ場としても利用され、ヨシキリ、ヨシゴイといった鳥類と関わりが深い。このように、分解の場となり、多くの水生動物のよりどころとなるヨシ原は、自然の浄化作用の上で重要な場所であり、野生動物と環境保護に重要な植物群落であると言える。

アセビ

(あせび・馬酔木)

【ツツジ科の低木】

 本州、四国、九州の山地に自生する常緑樹。やや乾燥した環境を好み、樹高は1.5mから4mほどである。早春になると枝先に複総状の花序を垂らし、多くの白いつぼ状の花をつける。馬酔木の名は、馬が葉を食べれば苦しむという所からついた名前であるという。多くの草食ほ乳類は食べるのを避け、食べ残される。そのため、アセビがやたら多い地域は、草食獣による食害が多いことを疑うこともできる。アセビは庭園樹、公園樹として好んで植栽される外、花もの盆栽等としても利用される。

 

アセビ

(あせび・馬酔木) 

アヤメ

(かつみ)

アヤメ科アヤメ属の多年草

アヤメは山野の草地に生える(特に湿地を好むことはない)。葉は直立し高さ4060cm程度。花は5月ごろに径8cmほどの紫色の1-3個付ける。外花被片(前面に垂れ下がった花びら)には網目模様があるのが特徴で、本種の和名のもとになる。

なお、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句がある。どれも素晴らしく優劣は付け難いという意味であるが、見分けがつきがたいという意味にも用いられる。

イヌタデ

(たで・蓼)

【タデ科の一年草】 

茎の基部は横に這い、多く枝分かれして小さな集団を作る。茎の先はやや立ち、高さは20-50cm。葉は楕円形。秋に茎の先端から穂を出し、花を密につける。花よりも、その後に見られる真っ赤な果実が目立つ。果実そのものは黒っぽい色であるが、その外側に赤い萼をかぶっているので、このように見えるものである。

赤い小さな果実を赤飯に見立て、アカマンマとも呼ばれる。雑草ではあるが、非常に美しく、画材などとして使われることもある。名前はヤナギタデに対し、葉に辛味がなくて役に立たないために「イヌタデ」と名付けられた。

イヌビエ

(ひえ・稗)

イネ科ヒエ属の一年草】 

栽培される「ヒエ」に似ているけれど食用にならないということで、「イヌビエ」という。草丈は60cm1.2m。花期は8月〜10月。花序は10cm25cm

イヌビエは非常に形態の変異が大きく、いくつかの変種が認められている。やや大型で芒が長いタイプは「ケイヌビエ」という。また、葉の縁が厚くなって白い筋が入るタイプは「タイヌビエ」。全体に小型で小穂に芒のないタイプは「ヒメイヌビエ」。しかし、これらの区別はなかなか難しいところで、区別する分類形質も少々不明確なところもある。

 

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